人と音色MAGAZINE
【インタビュー】ツナガリ講師 竹島恵美子先生 │ 隠しテーマのあるレッスン

【インタビュー】ツナガリ講師 竹島恵美子先生 │ 隠しテーマのあるレッスン

ツナガリMusic Lab. の先生をインタビュー。今回は、ぽん先生の愛称でおなじみのツナガリMusic Lab.の講師 竹島恵美子(たけしまえみこ)先生をご紹介したいと思います。ぽん先生はツナガリMusic Lab.に参加される前から、子どもを中心として音楽療法の現場で経験と技術を培ってこられた実力派の先生。東京にいる音楽仲間の紹介でツナガリを知り、想いに共感して参加してくれました。
今日のブログでは先生の想いや、音楽と療育の考えについて”レッスンの隠しテーマ”をキーワードに紐解いていきたいと思います!

竹島恵美子(たけしまえみこ)
音楽療法士、公認心理師。神戸女学院大学文学部卒業。3歳からピアノをはじめ、大学時代に、バンド活動やヤマハの直営店でデモンストレーターのバイトを経験。卒業後は、大手企業で社員研修の研修体系の作成・実施など、人材開発にかかわる。2010年から障がい児の音楽療法の仕事をしながら、ジャズピアノやいろいろなジャンルのキーボードプレイヤーとして、演奏活動をしている。2021年よりツナガリMusic Lab.のメンバー。

成長を引き出せる「音楽の強み」

紗貴子:

今日はよろしくお願いします!ぽん先生はツナガリに入る以前から音楽療法士として子どもと関わる経験を積んで来られてますよね。

ぽん:

そうですね!即興演奏を取り入れた音楽療法をやってきています。

紗貴子:

ズバリ、音楽療法と、いわゆる音楽レッスンは何が違うと考えられていますか?

ぽん:

音楽療法は「音楽活動をとおして子どもの力を伸ばす」という視点が入ってきますよね。社会性・言語などの能力・自己肯定感、、、、など。活動としてもみんなが同じカリキュラムをするのではなくて、
①アセスメントをして相手のことをよく知り、②分析して現状を把握、③そしてどんな成長を目指すのか長期的目標・中期的目標を立てて、④そこに向かっていくための活動を組み立てて⑤検証を重ねる。そんな風に現在から目標までの道筋を描いて支援するのが音楽療法です。

紗貴子:

うんうん。包括的な視点をもって子どもを育てていくという考え方ですね!
ツナガリMusic Lab. のレッスンともすごく共通する部分があります。

ぽん:

そうですね。またこの成長を引き出すのに『音楽』というのがいいんですよ。子どもたちは音楽が好きですよね。「好き・楽しい」と思ったことは、子どもたちは積極的に打ち込んでいけるので、楽しみながら療育を目的とした活動に入っていけますよね。

紗貴子:

ああ、わかります!私が以前勤めていた療育の現場では、カードや積み木を使った学習などを療育としてやっていましたが、どうしても子どもたちは「お勉強をしている」という意識になってしまう。その点音楽は子どもたちのやりたいという気持ちを自然に引き出して活動をスタートすることができますね。

ぽん:

ですよね。それに、音楽をしていると言葉をかわさなくても自然と意思疎通できるときってありませんか?「こっちを見てくださいー」「これをこうしてください」と言わなくても、音を交えるだけでお互いの気持ちをあわせていけるような。言葉でのコミュニケーションが難しい段階のお子さんも、活動に参加できるのは音楽ならではのことだと思います。

音楽セッションと療育の共通点

紗貴子:

ぽん先生は今でも学会にいって勉強されてたり、常に勉強を続けていますよね。

ぽん:

そうですね!「できた!」時のお子様の笑顔と、その成長を感じる親御様の笑顔を見るのが嬉しいから、しんどい勉強もがんばれるんです!
それに音楽療法の世界に入ってすぐに言われたんですよ「死ぬまで勉強ですよ」って(笑)

真秀:

死ぬまで勉強…重みのある言葉ですね。
学会では最近はどんなことを学ばれていますか?

ぽん:

たとえば自閉症の子どものモノの見え方や言葉の捉え方。実は自閉症の子は日本語よりも英語の方が入りやすいとか、、今色んな研究がなされているんです。わたしたちが療育の現場の中で感覚的にわかってるようなことを、ちゃんと数値を測って研究している病院や大学の方々がいらっしゃるんですね。
そういう科学的なデータと考えに触れて「音楽レッスンの中にどうやって反映できるかな」と考えて参加しています。勉強だけでなくて、現場があるのは強みですね。

紗貴子:

うんうん、素晴らしいですね

ぽん:

この仕事って「相手の幸せ、相手の成長」という不確かなものを目標にしている仕事ですからね。”相手のために100%のことができてる”と満足することは決してなくて、支援者(講師)は常に自分ができること、知見を広げてつづけていかないと、常々考えています。

紗貴子:

まさにそうですね。教育には正解がないというのはよくいいますが、それでもベストを追い求めることは大事だと思います。
冒頭にありましたが、即興演奏の技術も、ステージに立ち続けて技術を磨くことも続けてますよね。ステージでセッションをする力も、子どもの成長を引き出すことと関係していると感じるのですが、いかがですか?

ぽん:

それは本当におっしゃるとおりですよね。音楽のセッションって、はじめて集まった人と音楽を作っていくものなので「この人はどんな人かな、どんな演奏ができるのかな」とお互いを観察しあって「ここでできる最高の音楽」を一緒に作り上げていく関わりなんですよ。

紗貴子:

うんうん。


ぽん:

相手の音をしっかり聴いて、合いの手を入れたりして。音楽で相手のやる気や能力を最大限に引き出すことができるんですよ、一流のミュージシャンって。これってまさに音楽療法で子どものやる気や成長を引き出せる関わりですよね。だからわたしは知識の勉強だけじゃなくて、一流のミュージシャンのいるステージに飛び込んでいって揉まれているんです(笑)

紗貴子:

なるほど!やる気を引き出したり、引き込んだり、、まさに音楽力ですね。

ぽん:

演奏で支えてもらったり、支える側にまわったり。アンサンブルでそういった経験をしていると、”音の意味”まで考えるようになるんですよ。だから療育に関わるものとしては、演奏の技術も、この分野の知識・理解もどちらも大事なんですよね。
わたしもまだまだ勉強中ですし、周りの先生たちから学ぶことも沢山あるので、これから一緒に学んでいきたいなと思います!

レッスンの『隠しテーマ』

紗貴子:

さきほど「音の意味」という話がありましたが、音楽のレッスンの中でもいろんな活動には実は「意味」がありますよね。

ぽん:

そうですね、たとえば「次はどの曲にする?」って複数のカードから曲を選んでもらうとき。カードの提示方法を色々変えるだけで、その子がどこまで理解してその曲を選んでいるかを見ていたりしますね。その子の認知のレベルとか、理解の度合いを検証していたりします。

紗貴子:

そうですよね。たとえば2枚同時にカードだすときと、1枚ずつ順番に2枚のカードを見せて提示するとき。何気なくやっていることですが、本人の表情をみて「もしかしたら2枚同時だとわかっていないかも」という『仮説』をたてて、1枚ずつ提示するという方法で『検証』してるんですよね。

ぽん:

表面上には出てこない活動のテーマですよね。まさに「隠しテーマ」ですね。はじまりの挨拶から始まって、すべての活動にこの「隠しテーマ」があります。

紗貴子:

難しいテーマですけど、奥深さがある面白いテーマですね!先生が作っていた『パンダのリンダ』を例に話したいのですが、その隠しテーマをいくつかお伺いしてもいいですか?

ぽん:

パンダのリンダは私が作曲した人形歌なんです。「♪パンダのリンダはくいしんぼ〜」って歌いながら食べ物をあげていく活動なんです。
色んな「隠しテーマ」があるんですけど、まずは何を食べさせてあげるかを選ぶところ。はじめは「”バナナ”をあげましょう」などものを認知して選ぶ活動から始めますが、次は「”赤い魚”をあげましょう」という色の概念を取り入れていきます。

紗貴子:

うんうん。さっきのカードを選んでもらう活動に近いですね。

ぽん:

そして「どうぞ」「あーん」という人形とのコミュニケーションですよね。小さいころは食べさせてもらう側になることはあっても、食べさせてあげるというコミュニケーションはあまり機会がないですよね。そういう活動を人形歌の活動の中で取り入れます。

さらに、子どもが自分で歌い出すので、発語に繋がります!特にこの歌では、助詞を獲得することを想定して、歌詞の中に多様な助詞を盛り込んでいます。

パンダのリンダ「は」くいしんぼ
リンダはさかな「が」たべたいな
(あかい)(りんご)「を」くださいな
ごちそうさまでした♪

紗貴子:

おぉぉ!!パンダのリンダでは、楽しみながら、色んな課題に挑戦できるんですね。

ぽん:

そうです。音楽っていいですよね!

子どもたちと『合奏』をやってみたい

紗貴子:

ぽん先生はこれからツナガリでやりたいことはありますか?

ぽん:

こどもたちと合奏をしたいですね。今は個別レッスンが中心ですが、合奏にも色んな隠しテーマが盛り込めるんですよ。

紗貴子:

たとえばどんなことですか?

ぽん:

まずは音楽による「自己表現」ですよね。そして集団なので「ルールを守ること」も学べます。それからチームに「所属」する喜びを知ったりできますし、それぞれに「責任ある役割」を与えることも、音楽活動のなかでできます。この教室が大事にしている自己肯定感をすごく刺激できると思うんです。

紗貴子:

集団だからこそできることって本当に沢山ありますね!コンサートにむけてみんなで準備するあの雰囲気も味わってもらいたいな〜。是非やりましょう!

ぽん:

あとは「仲間づくり」ですね。今もツナガリMusic Lab.には新しい優秀な先生たちが集まってきてくれるようになってますが、こういう場所って本当にないんですよ。やりたくてもすぐに現場を持たせてくれる療育は滅多にありません。勉強してやる気のある先生のために、わたしの経験が役に立つなら存分に力になりたいと思います!

紗貴子:

心強い言葉ありがとうございます!

まとめ

ぽん先生の『隠しテーマ』のお話は、とても深みのあるテーマでしたね。
テーマをもってレッスンを組み立てられるようになるのは決して簡単ではありませんが、常に高いレベルを目指していきたいなと改めて思いました。
先生はインタビュー中なんども「わたしも沢山、失敗と恥をかいてきたので」とおっしゃっていました。成長していく子どもたちと一緒に、成長していけるチームでありたいと思います。

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